ドイツ文学史に燦然と輝く不朽の名作「Steel Empire(邦題:鋼鉄帝国)」。 “カール・ハインツ・シュティッヒ”の手によるこの大河ロマンが映像化されると聞き、私は高鳴る狂喜と共に、一抹の不安も感じざるを得なかった。 シュティッヒの叙事詩のごとき洗練された世界を、果たして映像で表現できるのか・・・。 しかし、全ては取り越し苦労であった。 映像作品「鋼鉄帝国」は、私の想像を遙かに超えた完成度で、その全貌を明らかにしたのである。 壮大なオーケストラによる幕開けと共に、スクリーンいっぱいに展開する大空中戦。 “奇跡のカメラワーク“と呼ばれる Suzukiの実力が、いかんなく発揮され、S・R・H・スタジオの制作による巨大な敵戦艦が所狭しと暴れまわっている。 もちろん、「鋼鉄帝国」は観せるだけの映画ではない。 「原作を200回は読み直した」という脚本の Asaiは、他の仕事をいっさい断って、惚れぬいたこの作品に取り組んでいる。 作品設定のこだわりからも、彼の気迫がひしひしと感じられよう。 そして、この才能集団をとりまとめる監督の Yamaguchi。 彼の言葉を最後に、このすばらしき作品を語るには足りない私のペンを置くことにする。 「素直な人類が、ここにはいます。皆さん、生きる活力を与えられた、純粋な我々がここにはいるのです」 |
映画評論家 浅川健治 |